はじめて麻を編んだ時、仕上がりがお手本よりも小さくなったことを覚えています。
どうしてなのか、しばらく考えると「編む力が強いから」だと分かりました。
サイズはお手本どおりにいかなかったけれど、ぎゅっと編み込まれた麻の触り心地は、
さらっとしていてどこにもひっかかるところがなく、とても気持ちのいいものでした。
無機質ではなく、命が宿っているかのような、たしかな存在感がありました。
製品というより生物にちかいような、そんな不思議な手ざわりなのです。
麻をきつく編むことは、しんどい作業です。
毛糸のようにすいすい編み進むことはありません。
一針、二針、編んでは指を休ませます。
でも、そうして編んでいくことで、手に取るたびに嬉しくなるような、とくべつな手ざわりが生まれるのです。
それは、そばにいる人がふとした瞬間に触れた時でさえ「なんだか気持ちいい」と感じるような、
心に届く柔らかさだと思います。
初めは「生まれたての命」のように、
使い続けた先には「長年ともに生きてきた獣」のように、
そして、いつでも「毎日やって来る美しい朝」のように、あなたに寄り添いますように。